温泉の定義
日本には「温泉法」という法律で、「温泉とは、地中から湧出する温水、鉱水及び水蒸気その他のガス(炭化水素を主成分とするガスを除く)で、下記に掲げる温度又は物質を有するものをいう」と定義されています。
1. 温泉源から採取されるときの温度が25℃以上。
2. 1s中に、1,000r以上の溶存物質を有する。
3. 18種類の特定成分(重炭酸ソーダ、フッ素イオン、水素イオン、リチウムイオン、沃素イオン、メタケイ酸
など)のうち、1つ以上を定量以上含有する。
以上の条件を満たしていれば「温泉」です。温泉にも色々な種類があり、またその分類のしかたはとても豊富
です、ここではさまざまな角度から温泉をご紹介します。
温度による分類
源泉の温度により温泉は次の4つの種類に分けることができます。
● 25℃未満/冷鉱泉
● 25℃〜34℃/低温泉
● 35℃〜42℃/温泉
● 42℃以上/高温泉
人が温泉に入って「気持ちいい」と感じるのは、42℃だといわれています。したがってほとんどの浴場では温泉の温度を42℃前後に設定しています。つまり冷鉱泉、低温泉、温泉については、ある程度加熱をしていることになります。となると高温泉こそ温泉らしい温泉と言えるかも知れません。
さらに源泉の温度が高い方が「効能成分が濃い」とされています。これはお湯が熱いほどお茶が濃く出るのと 似た原理です。「高温泉こそ温泉らしい温泉で、効能成分が濃い」と言ってしまうと、まるで高温泉こそが優 れているかの様ですが、温度が高いとお肌への刺激や体への負担が高いため適温に冷ます必要があります。ぬ るいお湯でのんびり浸かりたい方は「温泉」を選び、お肌が弱い方は適度に加熱してある「冷鉱泉」「低温泉」をおすすめいたします。ご自身の体調や好みに合った温泉選びをすることも大切です。
浸透圧による分類
浸透圧とは、濃度が違う液体を分けたとき、濃度を一定にしようと、濃度の薄い液体から濃い液体へ移っていこうとする力のことです。じつは人間の肌は温泉に含まれる効能成分を浸透させることができるのです。
浸透力で温泉を分けると次の3種類に分類されます(等張液=人間の細胞液と同じ浸透圧を持つ液体)
● 低張泉/浸透圧が等張液より低い
● 等張泉/浸透圧が等張液と同じ
● 高張泉/浸透圧が等張液より高い
一般に低張泉は、サラサラしたやさしいお湯で、温泉の成分をお肌に吸収します。反対に高張泉は、温泉の成
分がお肌に浸透するといわれます。
水素イオン濃度(pH値)による分類
● pH2未満/強酸性泉
● pH2〜pH3未満/酸性泉
● pH3〜pH6未満/弱酸性泉
● pH6〜pH7.5未満/中性泉
● pH7.5〜pH8.5未満/弱アルカリ泉
● pH8.5以上/アルカリ泉
一般に酸性泉は殺菌効果があるため皮膚病に、アルカリ泉はお肌の角質をとるため美肌効果があり、中性泉は
肌に一番やさしいとされてます。
温泉の泉質による分類
温泉は、含まれる化学成分の種類と量により、いくつかのグループに分類されます。
1.単純温泉(美肌効果)
泉温が25℃以上で、温泉水内の溶存物質量(ガス性のものを除く)が1s中1,000r未満のものをいいます。
そのうち、pH値8.5以上のものを「アルカリ性単純温泉」といいます。含有成分が薄く、体に対して刺激が少
ないため、お子様やご高齢者にもやさしい利用範囲の広い温泉です。
2.塩類泉
温泉1s中の溶存物質が1,000r以上のものをいいます(ガス性のものは除く)
陰イオンの主成分により、次のように分類されます。
● 塩化物泉(塩分による殺菌効果)
陰イオン主成分が、塩素イオンである温泉です。入浴により、皮膚に塩分が付着して発汗を抑えるため保温
効果があります。「熱の湯」「あたたまりの湯」とも呼ばれます。
● 炭酸水素塩泉(美肌効果)
陰イオンの主成分が、炭酸水素イオンである温泉です。入浴により、皮膚の脂肪や分泌物を清浄化し、肌を
滑らかにする効果があります。そのため「美人の湯」「美肌の湯」とも呼ばれます。
● 硫酸塩泉(傷への効果)
陰イオンの主成分が、硫酸イオンである温泉です。切り傷・火傷に効果があるともいわれ「傷の湯」と呼ば
れることがあります。
3.特殊成分を含む療養泉
1s中の溶存物質が1,000r以上の温泉のうち、特に治療の目的に供し得るものをいいます。
● 二酸化炭素泉(心臓病への効果)
温泉水1sの中に遊離炭酸を1,000r以上含む温泉です。炭酸ガスが溶けて細かい泡が出るため、入浴すると
体に細かい泡が付着します。
● 含鉄泉(貧血や婦人病への効果)
温泉水1s中に総鉄イオンを20r以上含む温泉です。湧出直後は無色透明ですが、空気に触れると酸化し、
茶褐色に変色します
● 含銅鉄泉(貧血や婦人病への効果)
温泉水1s中に銅を1r以上含む温泉です。湧出直後は半透明緑色ですが、空気に触れると酸化して不透明
な黄色に変色し、茶褐色の沈殿物ができます。
● 硫黄泉(高血糖、高血圧など生活習慣病への効果)
温泉水1s中に総硫黄を2r以上含む温泉です。そのうち、硫黄が遊離硫化水素の型で含まれるもの(硫化水
素泉)と含まれないもの(硫黄泉)に分けられます。卵の腐ったような硫化水素ガスの臭いが特徴で、酸化
すると黄白色の沈殿物を生じ、これは「湯の花」と呼ばれています。
● 酸性泉(殺菌効果)
温泉水1s中に多量の水素イオンを含む温泉です。殺菌力があり、刺激が大変強いため、ご高齢者や皮膚の弱
い人には向きません。また、長湯をすると湯ただれを起こすこともあります。
● 含アルミニウム泉(殺菌効果)
温泉水1s中の含有成分が100r以上で、陰イオンの主成分が硫酸イオン、陽イオンの主成分がアルミニウム
である温泉です。酸性泉と並んで殺菌力が強い温泉です。
● 放射能泉(万病への効果)
温泉水1s中にラドンを100億分の30キュリー以上含む温泉です。人体に悪影響を与えると思われがちな放射
能も、微量であればむしろ良い影響を与えることが実証されています。
(温泉ガイドブック2010より)